4人以下の飲み会が居心地の良いものになる理由を、数学的に証明する。

※この記事の内容は、清書した上で 4人飲みはなぜ面白い?数学で考える飲み会の最適人数 に寄稿させていただきました。

 

 

 

新卒で広告代理店に入り、はや2年が過ぎようとしている。

 

テレビ広告業界の会食や合コンなど、京都の片田舎でPCRなぞを駆使して遺伝子について考えていた頃とは真逆のめくるめく世界に放り込まれることになった僕だが、人間の根本の部分はやはり変わらず、大勢の集まりやパーティーに出ると大量のエネルギーを消費してしまう。

 

「大勢」というと漠然としているが、参加者の数が5人を超えると一人ひとりにフォーカスできず、やや辛くなってくる気がする。

 

一方で、4人以下の場合はとても楽しい会になる。もちろん、最たるものは僕の大好きなさし飲み、2人のケースだ。

 

これはどうしてだろうか。

 

それは、4人以下の飲み会では、深い話のできる「2人でのコミュニケーション」が取りやすくなるためである。 

 

言い換えると、「2人でのコミュニケーション」の割合が、「3人以上でのコミュニケーション」の割合よりも高くなる場合、僕の好きなタイプの飲み会が出現するのである。

 

それでは、「全体のコミュニケーション」に占める「2人でのコミュニケーション」の割合が、4人以下の飲み会では半分以上となり、5人以上の飲み会では半分以下となることを、数学的に証明してみよう。

 

 

 

3人での飲み会の場合、2人でのコミュニケーションは、3人から2人を選ぶ組み合わせに等しいから、2C3=3(通り)。3人以上でのコミュニケーションは、3人から3人を選ぶ組み合わせに等しいから、3C3=1(通り)。3>1で、「2人でのコミュニケーション」が優勢だ。

 

(コンビネーションの考え方がわからない人は、Aさん、Bさん、Cさんという3人を思い浮かべて、AさんとBさんが話しているシーン、AさんとCさんが話しているシーン、BさんとCさんが話しているシーン、AさんとBさんとCさんが話しているシーンの4つを具体的に考えてみてください。4人以上の場合も同じように考えることができます。)

 

4人での飲み会の場合、2人でのコミュニケーションは、4人から2人を選ぶ組み合わせに等しいから、2C4=6(通り)。3人以上でのコミュニケーションは、4人から3人を選ぶ組み合わせと、4人から4人を選ぶ組み合わせの和に等しいから、3C4+4C4=4+1=5(通り)。6>5で、依然「2人でのコミュニケーション」が優勢である。

 

(2人でのコミュニケーションは、A・B、A・C、A・D、B・C、B・D、C・Dの6通り、3人以上でのコミュニケーションは、A・B・C、A・B・D、A・C・D、B・C・D、A・B・C・Dの5通り。)

 

5人での飲み会の場合、2人でのコミュニケーションは、5人から2人を選ぶ組み合わせに等しいから、2C5=10(通り)。3人以上でのコミュニケーションは、5人から3人を選ぶ組み合わせと、5人から4人を選ぶ組み合わせと、5人から5人を選ぶ組み合わせの和に等しいから、3C5+4C5+5C5=10+5+1=16(通り)。10<16で、「3人以上でのコミュニケーション」が逆転する。

 

(2人でのコミュニケーションは、A・B、A・C、A・D、A・E、B・C、B・D、B・E、C・D、C・E、D・Eの10通り、3人以上でのコミュニケーションは、A・B・C、A・B・D、A・B・E、A・C・D、A・C・E、A・D・E、B・C・D、B・C・E、B・D・E、C・D・E、A・B・C・D、A・B・C・E、A・B・D・E、A・C・D・E、B・C・D・E、A・B・C・D・Eの16通り。)

 

実は、5人以上のいかなる場合においても、(2人でのコミュニケーション)<(3人以上でのコミュニケーション)となる。一応下記に証明をつけてみた。興味のない人は飛ばしてください。 

 

【以下証明】

 

5人以上での飲み会において、常に「2人でのコミュニケーション」の割合が「3人以上でのコミュニケーション」の割合を下回ることは、下記の不等式①を証明することに等しい。

 

n≧5のとき、いかなるnについても、

 

nC2<nC3+nC4+…+nCn-2+nCn-1+nCn―①

 

2項係数の公式から、

 

nC2=nCn-2―②

 

①②より、

 

nC2<nC3+nC4+…+nCn-3+nC2+nCn-1+nCn

 

⇔ 0<nC3+nC4+…+nCn-3+nCn-1+nCn―③

 

n≧5のとき、右辺は正の数であるから、③は明らかである。

 

よって、n≧5のとき、いかなるnについても①が成立する。

 

【証明おわり】

 

 

  

本当は、「2人でのコミュニケーション」や「3人でのコミュニケーション」の会話にかかった時間やその内容を数値化して、それぞれの人数におけるコミュニケーションの重みづけを行う必要があるのだろうけれど、さしあたり組み合わせの数だけでも、それぞれのコミュニケーションの割合というのは推定できるだろう。

 

こうしてみると、直感というやつは侮れない。なんとなく「5人以上はしんどいかな」と思っていたら、きれいにそれを裏付ける数字が出てしまった。

 

理論は直感を裏付けるものだと常々思っているけれど、こうして自分で感じたことを数字や理屈で示してみることができると、元理系の端くれとしては嬉しく思う。

 

補足ですが、今日の記事の内容を理解したい人は、高校数学の1年生の教科書を読んでみるとよいと思います。分野的には「場合の数と確率」の「順列・組み合わせ」です。

 

新課程チャート式基礎からの数学1+A

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