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ハロウィンがちっとも楽しくないあなたへ。

自分のこと コミュニケーション 広告 雑感

僕が大学に入った2000年代の後半あたりから、ハロウィンというイベントは徐々に市民権を得てきたような気がする。

 

僕の入っていたサークルでは、毎年ハロウィンが近くなると「今年は何の仮装をしようか」とみんなで考え、あれこれと準備しあったものだった。

 

わいわい楽しく語り合っている同期たちの横で、僕はいつも「早く帰りたいな…」と思っていた。

 

ムーブメントに乗ったら乗ったで多少は楽しいのだが、その楽しさを遥かに上回る疲労感が、いつも僕を襲ってきた。

 

そのうちこの違和感に慣れるのかな、と思いながら月日を重ねてきたが、ハロウィンというイベントの規模が大きくなるのに比例して、僕の中の違和感は強まっていった。

 

そして気付いた。ハロウィンはつまらない。少なくとも、僕はハロウィンを楽しめるように生まれついていないということに。

 

 

 

ハロウィンの何が嫌かって、「楽しい!」とか「驚き!」とか、そういった人間の「素晴らしいとされる感情、正の感情」を強制されている気がするからだ。

 

こんな仮装をして友達をビックリさせてやろう!おもしろい恰好をした人たちとわいわい過ごそう!こういうのって楽しいよ!君もそう思わない?

 

そう、言われている気がする。

 

いや、気がするどころではなく、実際に会社の人から「ハロウィン何かするの?」と聞かれて、「僕ハロウィンの何が楽しいのかわからないです」などと言おうものなら、非国民扱いされること間違いなしだ。

 

自分が広告代理店にいるから、なおのことそう言われるのかもしれない。

 

広告代理店という存在は、昔から、「みんなが夢中になれるもの」を創り出すことによって、お金を生み出していた。テレビをはじめとしたマスメディアに乗る広告は、すべからく「みんなが楽しいと思うもの」「みんなが欲しいと思うもの」であって、「陰惨で憂鬱だけど、たった1人を救うもの」なんて、一切存在しなかった。

 

より多くの人に届く手段であるマスメディアを使うのだから、より多くの人が「いいね!」と言うような、万人が善だと信じているような感情に働きかけるのが、常道なのだ。

 

その「正の感情」のことを端的に表しているのが、広告業界の就職活動をしているとよく目にする「嬉しい驚き」という言葉である。

 

僕だって、「嬉しい驚き」の大切さは理解しているつもりだ。部活を引退する時に後輩から思いがけない手紙をもらって涙したり、恋人との記念日にとっておきのサプライズをして相手に喜んでもらったりした経験は、多くの人が思い当るものだと思う。

 

だが、人間の感情は正のものだけではない。

 

誰かを恨んだり、嫉妬したり、誰かに死ぬほど欲情したり、なんとなくあいつとはうまが合わないと思ったり、蔑んだり、コンプレックスを抱いたり、卑屈になったり…。

 

広告業界にいると、どうもこれらの「負の感情」が、忘れ去られているように思うことがある。広告業界人が「顕在化していない人の欲望や感情」を「インサイト」と言う時、そこには「嬉しい驚き」的なものしか想定されていないような気がするのだ。

 

そして、ハロウィンというイベントが僕をどうしようもなく苛立たせるのも、人間の「正の感情」にのみフォーカスしているからだと思う。

 

 

 

余談ではあるが、ハロウィンで出たゴミをみんなで集めて渋谷をきれいにしよう!という活動が、さまざまな場所で話題になっている。ほとんどは、賞賛という形で。

 

誰がどう見ても、「良いこと」だ。素晴らしい。

 

なのに、僕はこの活動が賞賛されることに、どうしてももやもやした感情を禁じえなかった。

 

それはきっと、自分がこの活動で想定されている枠組みから、排除されていると感じてしまうからだと思う。

 

ハロウィンを楽しむだけ楽しんで、旅の恥はかき捨てとばかりに大量のゴミを巻き散らす人(この活動の仮想敵)と、ハロウィンも楽しむけど、立つ鳥跡を濁さずな人。

 

この活動では、これら二者しか想定していない。

 

「ハロウィンをそもそも楽しいと思えない人」は、ここに入ってこない。

 

僕が感じた違和感の正体は、それなんだと思う。

 

 

 

「嬉しい驚き」的な「正の感情」ばかり取り上げるのではなく、マイナスも含めた「生の感情」を大切にしていこうよって、僕は思う。

 

今はマスメディアの勉強の身だから、「正の感情」ばかり感じさせられる日々だけど、僕がコミュニケーションプランナーになったら、そういう気持ちでプランニングをしてみたいなって思う。

 

…なんだかんだ書いたけど、生まれ変わったら、ハロウィンを素直に楽しめる人になりたいなぁ。だって、こういうふうに感じてしまうのは、めんどくさいんだもん。とても複雑なんだよ。