どうやら春が来たようだ。
いろんな人に聞くと、春は「希望に満ちた、ワクワクする」季節であるらしいが、僕にとっては春という季節ほど切なくて胸が苦しくなる季節は他にない。
過去のあれこれをとりとめもなく思い出して、一人でノスタルジーに浸り、死にそうになる。僕はこれを「ノスタル自慰してノスタル死に」と呼んでいる。
というわけで、青春時代に聴いておくともれなく大人になってから「ノスタル死に」できる曲を、邦楽のロックやポップスのジャンルからランキング形式で10曲選んでみた。
第10位
風をあつめて / はっぴいえんど
70年代、日本のロックがまだ英語で歌われていた時代、「日本語ロック論争」にケリをつけ、邦楽の歴史に新たな1ページを刻んだ名盤『風街ろまん』。
このアルバムのどこか異世界のような雰囲気はそれだけでも鳥肌モノだが、その中でもこの名曲中の名曲『風をあつめて』。いやあ、ノスタル自慰が捗りますね…。
この曲を劇中曲として使用した映画『ロスト・イン・トランスレーション』ならぬ、テクノブレイク・イン・ノスタルジーです(全然上手いこと言えてない)。
第9位
Camera! Camera! Camera! / フリッパーズ・ギター
Flipper's Guitar - Camera! Camera! Camera ...
90年代初め、彗星のごとく登場し「渋谷系」なる言葉を創りだしたフリッパーズ・ギター。この頃に青春を送ってみたかったとどれだけ思ったか知れない、センス抜群のギタープレイ。
イントロが流れただけでテクノブレイクしそうになります。
第8位
ハイウェイ / くるり
ご存じ『ジョゼと虎と魚たち』の主題歌でもあります。この映画自体、観る人にさまざまなことを考えさせる名作だと思いますが、『ハイウェイ』という曲がその名作ぶりを一層際立たせていることに疑いの余地はないでしょう。
『ジョゼ虎』も『ハイウェイ』も好きだという人は、ぜひフランソワーズ・サガンという人の小説を読んでみてください。「ジョゼ」という名前がこの作品から来ている『1年ののち』や、デビュー作『悲しみよこんにちは』など、素晴らしい作品ばかりです。
ちなみに…この記事の洋楽版があれば間違いなくランクインするであろうサイモン・ガーファンクルの名曲『サウンド・オブ・サイレンス』の歌い出し"Hello Darkness, My Old Friend,"は、「悲しみよこんにちは」("Hello Sadness")から取られたそうです。
第7位
KYOTO / JUDY AND MARY
学生時代、僕は京都に住んでいました。おとぎ話のように幻想的な夜桜の並ぶ木屋町・先斗町、遠く春霞のかかる嵐山の渡月橋、ジブリ映画に出てきそうな水門とトロッコ跡が素敵な南禅寺、そして大学生たちが一瞬の青春を新歓コンパというバカ騒ぎに費やす鴨川沿い…。
ジュディマリというバンドは、とてもポップでありながら、時々本当に信じられないくらい切ないコードを繰り出してきます。それが思い出とぐちゃぐちゃに混ざり合って、僕をノスタル死にさせるのです。
第6位
おまつり / 四人囃子
※『おまつり』は8分くらいから。
1970年代の邦楽が誇る、ジャパニーズ・プログレッシヴ・ロック・バンド。とか言うとなんだか誰も聴く耳を持たなそうだけど、このバンドはとてもキャッチーで聴きやすい。
なんでも当時は「18歳の若さでピンク・フロイドの大曲"Echoes"を完璧に演奏できるバンド」として有名だったそうだけど(Wikipedia参照)、この『おまつり』という日本的ノスタルジーの塊のような曲は、Pink Floydには作れまい。
第5位
My Girl / The Pillows
The Pillows - My Girl (Document Version) - YouTube
山中さわおがリアルの世界でモテるのかどうかは知らないが、彼の作る音楽は、過去を引きずってばかりの冴えない男たちのハートに突き刺さる。
いつだったか、この曲を『秒速5センチメートル』のキャプチャ画像にかぶせて編集した動画を観たが、それはそれは、ひどく心にこたえるものでありましたよ。
第4位
荒井由実 - ひこうき雲 MUSIC CLIP - YouTube
僕が初めて『風立ちぬ』を観たのは映画館だったのですが、ラストシーンでこの曲が流れてきた時には、それはもう死にそうになりました。「これを持ってきたか!」と。
詩の世界観やメロディももちろん素晴らしいのですが、ギターの教本でもよく取り上げられる、サビのコード進行がすごいです。「空を駆けてゆく」のところ。本当にぶっ飛んでアタマがおかしくなりそう。
ところで、「ひこうき雲」って素敵な日本語だなぁ、と思います。英語だと"Vapour Trail"、つまり「水蒸気の跡」という意味になりますが、なんとも味気ないですよね。ちなみにRideというイギリスのバンドがその名もズバリ"Vapour Trail"という曲をやってます。聴いてみてもらえれば、彼らはきっと日本的なマインドを持ち合わせていたんだろうなぁと思いますよ。
第3位
OMOIDE IN MY HEAD / NUMBER GIRL
NUMBER GIRL - OMOIDE IN MY HEAD (last live ...
※2:45~
大学時代、徹マンをやった明け方に、東大路通を下宿に向かってゾンビのように歩く。徹夜明けの妙な高揚感、くたくたに疲れ果てた身体、ぐるぐると回り続ける頭に、この曲はいつも沁み入ってきました。
説明不要。たぶん一生聴き続けるであろう、超名曲です。
第2位
アパート / スピッツ
これ、大学時代に一人暮らししたことのある人なら、誰でもノスタル死にできるんじゃないかと思います。現実なのか妄想なのか、本当にそんなことがあったのか、今ではもう僕にはわからない、君との二人暮らしの世界。
add9やsus4のコードが絶妙な透明感を醸し出しています。「壊れた季節」とかすごい表現ですよね。そしてこのスピッツ真骨頂とも言えるアルペジオ。ニクし、三輪テツヤ。
スピッツは僕の中での「テクノブレイクできるバンド」1位ですが、その中でもオカズ実用度の素晴らしく高い名曲です。
第1位
LUCKY / スーパーカー
※0:40~
まあ、この曲はちょっとヤバいですね。僕は昔、その頃付き合ってた女の子と遊びのバンドを組んでこの曲を演奏したことがありました。もちろんフルカワミキがその子で、僕はナカコーでした。誰にでもそんな過ちはあると思いますね。ハイ。
思い返すと、今日挙げた曲のどれも、最初に聴いた時は別段大した思い入れもありませんでしたが、年月が経つにつれ、ノスタル自慰に無くてはならない音楽になっていったのでした。
過去の風景とか思い出してみても、当時はなんとも思っていなかった景色が、パッと思い浮かんだりする。そのくせ、あんなに強く好きとか嫌いとか思ってた気持ちが、きれいさっぱりなくなってたりする。思い出ってホント、不思議なものです。
また10年くらい経ってこの記事を更新してみたら、今日なにげなく聴いてる音楽が、ランクインしてくるのかもしれませんね。